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地獄から天国…球児冷や汗球団新28S

一塁アウトで試合終了。関本(右)の祝福に藤川は笑顔(撮影・河南真一)
一塁アウトで試合終了。関本(右)の祝福に藤川は笑顔(撮影・河南真一)

<阪神6-5ヤクルト>◇2日◇甲子園

 ああ同点…。いや、走ってないやん! 阪神藤川球児投手(27)が、球団新の28セーブ目を冷や汗もので飾った。2点リードの9回、1死二、三塁から青木の二ゴロで1点差に迫られ、なお2死三塁。続く田中浩を空振り三振に打ち取ったが、ワンバウンドのボールはバックネットへ転々…。三走の福川がホームへ駆け込むが、打者田中浩のスタートが遅れ、一塁送球は楽々アウト。ラッキーな1勝で3位横浜にゲーム差なしと迫り、3日からの「長期ロード」に臨む。

 数々の修羅場をくぐり抜けてきた。その藤川が、どんな大ピンチをしのいだ後よりも興奮していた。

 「アカンと思って、どないなっとんねんと思って…。ツイてますね。マジメにやってると、いいことあるね。(球団新の28セーブ目に)ラッキーッ!」

 ベンチ裏から出てきた汗がしたたる顔は、緩みっぱなしだ。それほどミラクルな幕切れだった。

 3秒で地獄は天国になった。9回、1点差に迫られ、なおも2死三塁の場面。藤川は田中浩をカウント2-1と追い込む。もう失点できない。フォークで三振を奪いに行く。だが外角低めにワンバウンドした投球は大きく跳ね上がり、バックネットまで到達した。甲子園がため息に包まれる。

 「アカン…」。藤川も同点を覚悟した。転がったボールを追う矢野の背中を追いかけるように、ベースカバーの本塁に入ろうとする。三走は還ってくる。間に合わない。「どないしよ」。本塁とマウンドの間で困惑する。中途半端な立ち位置が、歓喜の中心に変わると知るはずもない。

 球審はスイングの判定だが、田中浩は振り逃げていないのが目に入る。女房役に指示を出すのとほぼ同時に、白球はバックネット付近から一塁へ転送された。つかんだシーツがバンザイのように両手を突き上げる。矢野は両手を広げて優勝したかのよう。藤川は関本に後ろから抱きつかれ、笑いが止まらない。火消し失敗は、球団新記録の28セーブ目に姿を変えた。

 苦しかった。空振りが奪えない。2点リードの場面で最終回に登板も、連打から無死二、三塁のピンチを招く。1死後、青木の二ゴロの間に1点差に詰め寄られた。それまでに空振りは青木の1球だけ。直球もカーブもバットに当てられる。田中浩からこの日、2つ目の空振りが異例の幕切れを演出した。万全でない藤川が巻き起こしたドラマに違いない。

 岡田監督は「最後にあんな形で表現しようがない。(6回の)田中に始まって、田中に終わった感じだな」とニヤリだ。6回に田中浩の死球判定を巡って球審に抗議していた。藤川のセーブ球団新には「まだ(シーズン)途中で早いよな。考えたら(去年まで抑えの)久保田も少なかったんやな」と目を細める。

 チームは3日から長期遠征に入る。甲子園がくれた最高の結末に背中を押され、ナインが高揚しないはずがない。3位横浜に1厘差。もう頂点は、奇跡ではない。

[2007年8月3日9時6分 紙面から]

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