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こだわりシアター 哀しき純愛物語

- 兄(妻夫木聡)と妹(長澤まさみ)、血の繋がっていない兄妹の同居生活は…
「涙そうそう」(30日公開、東宝)
国民的ヒット曲「涙そうそう」が歌詞(森山良子作詞)そのままの感動を呼ぶ映画になった。母亡き後、妹(長澤まさみ)のためにと懸命に働く兄(妻夫木聡)。母の再婚で“兄妹”になった2人の愛情あふれる同居生活。兄は血が繋がっていないことを知りながら、実の妹以上に彼女を守り育てることにすべてをかける。男女愛や兄妹愛を超えた2人の愛は、どこか哀しみに彩られながらも限りない優しさに満ちている。
歌謡映画の歴史は古い。かつて美空ひばりら人気歌手は、ほとんどが映画に出演して歌い、ヒット曲を無理やり映画に仕立てもした。山口百恵以降、歌手映画は下火になったが、「涙そうそう」は久々の「歌から発想した映画」である。森山良子作詞による曲は、亡き兄を想って書かれた哀切な歌。夏川りみが紅白歌多合戦で4年続けて歌い、今や国民的ヒット曲になった。その映画化は、沖縄を舞台にした胸締め付ける兄妹愛の感動編に仕上がった。
兄妻夫木聡(25)が高校入学する妹長澤まさみ(19)を離れ島から沖縄本島に呼び寄せ同居生活を始める。仲の良い兄妹だが、彼女は母の再婚で妹になっただけで血は繋がってはいない。16歳になり美しく成長した妹に兄は驚き、彼女を守るため恋人とも別れて懸命に働く。
誰よりも愛し合い、信頼しあう仲。だけど戸籍上は兄妹というアブない関係が、2人の同居生活に緊張感をもたらす。実際は違うのに「兄と妹は結婚できない」という社会通念の壁の前に、妹は兄との同居を解消して部屋を出て行く。不幸せな関係である。だが、恋人や兄妹愛を超えた2人の愛のありようは、からりとした沖縄の風のようにさわやかだった。
名匠・成瀬巳喜男監督の「乱れる」(64年)は未亡人の兄嫁(高峰秀子)を愛してしまった義理の弟(加山雄三)の悲劇を描いた名作である。純粋な愛の前に立ちはだかる“家族”の壁。愛が万能の力を持ち得ないことは「ロミオとジュリエット」の昔から“永遠の悲劇”なのである。
製作のTBS八木康夫取締役プロデューサーは「昨年、それぞれの“涙そうそう”を募集して、約7000通の応募があった。2本ドラマ化しましたが、集大成として映画にしたかった。原作ものよりもオリジナルで行こうと、原曲をモチーフに脚本化(吉田紀子)した。テレビヒットの映画化よりもやはりオリジナルでいきたかった」と力を込めた。いささか取り止めのない純愛映画ばやりの昨今、少々歯ごたえのある不条理恋愛映画である。【五】
◆ストーリー 自分の飲食店を持つため沖縄で懸命に働く洋太郎(妻夫木)のもとに、離島から妹カオル(長澤)が高校に合格しやって来る。彼女は洋太郎が8歳のころ、母(小泉今日子)の再婚で妹になったのだった。母の遺言で「どんなことがあってもカオルを守る」と誓った洋太郎は16歳になった彼女の美しさに驚く。詐欺に遭った洋太郎は借金を背負って恋人(麻生久美子)と別れる。いつしか“兄妹”の間に微妙な感情が芽生える…。「いま、会いにゆきます」の土井裕泰監督。
9月27日付
- 監督の椅子 深作健太監督(34)(写真あり)
- ヒロイン 多部未華子(17)(写真あり)