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何より尊いオカンの無償の愛

オカン(樹木希林)を東京に呼び寄せるボク(オダギリジョー)。ようやく2人の生活が始まる
オカン(樹木希林)を東京に呼び寄せるボク(オダギリジョー)。ようやく2人の生活が始まる

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(4月14日公開、松竹)

 日本の、いや世界中のすべての息子の心に響く映画である。才人リリー・フランキーのベストセラー「東京タワー-」(松岡錠司監督)が、テレビドラマに続いて映画になった。九州・小倉での少年時代から高校、大学と女手ひとつで育ててくれたオカンへの限りない愛と感謝の物語。「ボク」を演じたオダギリジョー(31)は「これはリリーさんの話ではない。僕自身の話であり貴方の話でもあります」と思いを込めている。「この映画ならすり減ってもいい」と気合を入れる松竹関西支社の白石麻依子さん(35)が見どころご案内-。

 オカンはわずかな手荷物だけを手に息子のいる東京に出ます。故郷を捨てる寂しさ、息子への遠慮…複雑な思いを沢山背負い込んで…。新幹線を降りる前、シートを起こし姿勢を正す仕草に、すまない思いが滲む。「この町でずっと2人で住むんだよ」と迎えた息子に、やっと笑顔があふれた時、なんだかホッとするのは、やはりそういう母が私にもいるから。そう、これはありふれた物語だけれど、すべての息子、いえ娘にも心に響く母の物語。この映画では樹木希林さんが見る人の「オカン」になる瞬間が必ずやってきます。

 母の愛。「ボク」のためにオカンはあらゆる無理を重ねてお金を送り続ける。朝ごはんの時間から逆算してぬかどこを混ぜ、手間ひま掛けて料理を作る。物と金さえ与えれば、という親とは一線を画している、と、劇中のおいしそうな料理の数々が教えてくれる。

 そんなオカンに甘えるボクは、世間から見ればマザコン。でも「母親って凄いな」と思う気持ちのある人は、女性をリスペクトする人でもあると思う。まかり間違っても女性を「産む機械」なんて表現したりはしない。私の数少ない恋愛経験から言わせてもらえば、そういう人といると居心地がいい。「女性にはかなわないよ」と言う人にこそ度量を感じます。実際、いざという時、何とか男気を発揮しようと頑張る人でもあります。散々甘えてきたボクがオカンを精一杯守ろうとしたように。

 宣伝担当として立ち会った数多くの試写会で、私は「男性の泣き顔」一生分ぐらい見ました。筋肉隆々の男性が、会社の役員さんが、目を真っ赤にして出てきます。先日、来阪したリリーさんは「オカンとは?」と聞かれて、ズバリ「自分より大切な人」と答えていました。確かにオカンを思い、涙する息子たちを持つ世の「オカン」は、自分の幸せを優先しなかったかもしれない。けれど、結局はとても「幸せだ」と自分の幸せを実感しているのでしょう。少々長すぎる独身の私は、ただ羨ましい。

 ◆白石麻依子 71年6月3日、神戸生まれ。ヘラルド映画(現角川映画)を経て、松竹入社。好きな俳優はスティーブ・マーチン。

 ◆「東京タワー-」ストーリー 60年代、小倉でオカン(内田也哉子)と遊び人のオトン(小林薫)とボク(オダギリジョー)が幸せに暮らしたのは短かった。オカンはオトンの家を出、ボクを筑豊の実家に連れ帰り、女手ひとつでボクを育ててくれた。ボクは大分の美術学校に進み、東京に出て美大生になった。遊んでいても、オカンは何も言わずに仕送りしてくれた。イラストレーターとして何とか食えるようになったころ、オカン(樹木希林)はガンの手術を受けた。手術は成功したが完治しなかった。まだ1人で働くつもりの母に、ボクが言う。「東京に来たらいいやん」。




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