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役所広司が見せる「男の理想の死に方」

- 「象の背中」の役所広司
「象の背中」(27日公開、松竹)
がんになど誰もなりたくない。だけど、もしなってしまったら、こんな風に最期を迎えたい…理想的な“男の死に方”を日本の誇るナイスミドル、役所広司(51)が演じて見せてくれた。秋元康原作の「象の背中」(井坂聡監督)はいわゆる難病ものだが「余命半年」と宣告された男が、手術も延命治療も拒否し「死ぬまで生き続けたい」と最期を全うする、ある意味でハッピーな物語である。
建設会社のバリバリの部長・幸弘(役所)は大きなプロジェクトを抱えて大忙しだったが、検査で「末期肺がん」が分かってがく然とする。だが、そこから彼はちょっと違う選択をする。手術はせず、妻(今井美樹)にも告げず、今までに出会った大事な人々…初恋の相手(手塚理美)、高校時代の親友(高橋克実)、そして絶縁していた兄(岸部一徳)と再会し、関係を修復していく。家族には、息子(塩谷瞬)にだけ男同士として打ち明け、平静を装って出勤し続ける…。
初めての難病ものに、役所は4カ月間、ほとんど炭水化物を摂らず、撮影前に7キロ、撮影中に5キロ、計12キロ落として臨んだ。「幸弘は今まで通りの生活をしたかった。治療をやめてできる限り自分で遺書を書き続け、歩けるうちに自分でサヨナラを言いに歩くなんて、いいなあと思う」と共感を寄せる。
幸弘はやがて激痛にさいなまれ、妻や娘にも知られる。会社には辞表を出し、家族の温かい支援を得てホスピスに入る。父のベッドの傍らで家族3人が寝る場面は、悲しみの中にも家族だけにしかない温かさが画面にあふれ出る。裕福で良妻賢母の妻と優しい2人の子供に見送られる男は恐らくファンタジーの世界だろう。とりわけ、理想的な愛人(井川遥)までいる点に「一番苦労し、不安だった。でもズルいところもあるけど、妻と愛人が鉢合わせしてもオドオドせず堂々としている。そこが魅力かな」と役所。愛人の存在で一部女性客には拒否反応が強いそうだが、それだけ男にとって理想の最期なのかもしれない。【安永五郎】
10月6日付
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