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最速ゲイ9秒85でV/世界陸上

<世界陸上:男子100メートル決勝>◇2日目◇26日◇大阪・長居陸上競技場

 新王者の誕生だ!! 全世界が注目した男子100メートル決勝は、全米王者の新星タイソン・ゲイ(25=米国)が9秒85で制した。世界記録保持者アサファ・パウエル(24)との対決に初めて勝ち、世界最速の座に就いた。パウエルは3位に敗れ、デリック・アトキンス(23)が2位に入った。日本の朝原宣治(35=大阪ガス)は準決勝で10秒36で8着に敗れ、悲願の決勝進出はならなかった。

 オレが新王者だ! 目をひんむき、大口を開け、声にならない雄たけびを上げてゲイがゴールに飛び込んだ。「今日、この瞬間を待っていた。最高だ!」。放心状態の世界記録保持者パウエルを尻目に右手を突き出し、観客席に向かって再び絶叫した。タイムなんかどうでもいい。電光掲示板には9秒85の数字が浮かんだが、目もくれず喜びに浸った。

 全世界の人々が注目した人類最速決定戦。スタートはパウエルに遅れたが「不可能なんてない」という母親の口癖を自分に言い聞かせ、ラスト30メートルで獲物をキャッチ。筋肉を躍動させ、大地からの振動に唇を震わせながら、並ぶ間もなく抜き去った。

 2年前の屈辱を晴らした。05年ヘルシンキ大会の男子200メートルでは4位に敗れ、1~4位を独占した米国勢の中でただ1人喜べなかった。「あの悔しさがモチベーション」。あれから2年。最高のリベンジを果たした。昨年5戦全敗だったパウエルを初めて破り、次のターゲットは世界記録。その前に今大会で200メートル、400メートルリレーでの3冠も現実味を帯びてきた。

 金メダルは「恩師」にささげる。14歳までは1歳上の姉ティファニーさんにも勝てなかった自分を育ててくれたのがブラウマン・コーチだ。同コーチは現在、横領罪で服役中だが、獄中に電話をかけて練習メニューを授けてもらっていた。ゲイは潔白を信じ、コーチの妻子の面倒も見てきた。実は27日が出所予定日だという。最高のプレゼントとなるに違いない。

 世界も驚く急成長だ。100メートルでは05年まで10秒06が最高。昨季からもう1人のコーチ・ドラモンド氏(03年パリ大会フライング失格)に師事して課題のスタートが改善。1年間で9秒84まで一気に記録を縮めた。疑いの声もあるが「オレは絶対にドーピングなんかしていない」。昨季からうんざりするほど検査と質問を受けたが、結果は“シロ”。今あるのは、ゲイより速い男は地球上どこにもいないという事実だけだ。【太田尚樹】

[2007年8月27日12時11分 紙面から]

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