阪神15歳辻本が激安契約「役立つ選手に」
最低年俸でも、15歳には大きな夢がある。阪神がドラフト8巡目で指名した辻本賢人投手(15=マタデーハイスクール)が21日、甲子園球場で指名あいさつを受け、仮契約を結んだ。近年ではチーム史上最低額の契約金1000万円、年俸はプロ最低保障の440万円で、背番号も平凡な「61」に決定。ドラフト史上最年少への注目度に反して、何一つ特別扱いのないプロ入りにも辻本は「幸せ。何年かかっても1軍に上がりたい」と目を輝かせた。
15歳の辻本は生まれて初めてのスーツ姿で、聖地甲子園のマウンドに立った。父仁史さん(44=会社役員)が前日に探し回った、サイズ30・5センチの革靴から伝わる黒土の感触に、入団の実感が込み上げた。カメラマンの要求に応じて、投球フォームを披露。伸びやかな身のこなしが、あふれる夢の表れだった。
「契約を結べてすごくうれしい。野球をやる環境がすごい。最高の施設。子供のころに何回か来て、甲子園は特別。マウンドに立って、ここでやるという気持ちが強くなった」。
17日のドラフト会議で指名を受けてから、阪神とはこの日が初接触。球団の配慮で、本拠地甲子園で指名あいさつを受けた。両親同席の元、そのままプロ入りの契約交渉に進んだ。示された契約金は、近年では02年ドラフト12巡目松下以来の最低額1000万円、年俸は野球協約で下限の440万円だった。
「使い道は考えていない。大金? そうですね」。
若さか話題性か、15歳の評価額は…。契約金、年俸の多寡は1つの注目だったが、担当の池之上スカウトは「これをベースに上を目指して欲しい」と特別扱いをしなかった。一からの、いやゼロからのスタートは辻本も望むところだった。特色のない背番号「61」の勧めにも「うれしい、ずっとやっていきたい」と即答。来年1月からは球団の独身寮に入り、プロ野球選手としては最低の月給約36万円で生活する。
仮契約に至った交渉で、プロ側を感心させた。辻本は、公式発表された身長181センチという数字が引っ掛かっていた。「正確には180センチしかない。大丈夫なのでしょうか」。3年間留学した米国で計測した6 フィート の換算で生じた1センチの誤差にこだわりを見せた。池之上スカウトから「すぐに伸びるから心配ないよ」と思わず諭された。
ドラフトを境に環境は一変した。近所を歩くと「おい、辻本」と声を掛けられる。若者の必需品といわれる携帯電話は持っていないが、アメリカ仕込みのパソコンを駆使する。メールには多くの激励文が届いており、その中の1つに、米国留学中に投球の基礎を教わった、元巨人のクライド・ライト氏からのものがあった。
ライト氏 「1年間は投げなくてもいいから、下半身をしっかり鍛えなさい」。
誰よりも早く、スタートラインに立った。その分、未来への道は誰よりも長く伸びている。「何年かかっても上(1軍)に上がって、チームの役に立つ選手になりたい」。金額など眼中にない大きな夢を伴って、辻本がプロ人生を歩む。【町田達彦】
◆辻本賢人(つじもと・けんと)1989年(昭64)1月6日、神戸市生まれ。カナディアンアカデミー小学部2年から野球を始め、小4からボーイズリーグ「兵庫尼崎」に所属。中1の01年夏に単身渡米し、オクラホマ州でホームステイ生活を送る。昨年9月にカリフォルニア州に移り、「マタデーハイスクール」に入学。映画「岸和田少年野球団」に野球少年の役で出演した。父仁史さん(44)、母瑠璃子・クリスティーンさん(42)弟優人くん(12)妹笑佳さん(9)。母方の祖母はドイツ人。181センチ、75キロ。右投げ右打ち。
[2004/11/22/10:52 紙面から]
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